狩り狩り原始人が生まれるまで

狩り狩り原始人」を作ろうと思ったキッカケや想い、制作時の事を書き残そうと思います。



キッカケ

岡本吉起さんのYouTubeチャンネル岡本吉起 ゲームchが好きでよく観てるのですが、いつかの動画内で「僕なら原始人のボードゲーム作りますね」と岡本さんが仰っていました。
もうどの動画か分からないですがw

その動画を観た後に「原始人のボドゲって面白そうだなぁ~ちょっと考えてみよ!」と思ったのがキッカケでした。

岡本吉起さんはストⅡやモンストを作られた方です。

最初は対戦ゲームでした

実は最初のモックでは協力ゲームではなく、誰が狩れるか競争するバチバチの対戦ゲームでした。
武器カードも棍棒、斧、槍、弓の4種のみ。

しかも狩りに成功したプレイヤーは獲物の呪い(制約)がかかり、狩れば狩る程制約が足されてシンドイ!っていう鬼仕様。

制約がキツ過ぎて「もう狩れねぇよ!w」ってなってましたw

対戦ゲーム時のルール

バチバチの対戦ゲームだった時のルールは、獲物を狩れるダメージが決まっており、各自武器カードの手札を持ち、表面を確認。
親から武器カードを裏面(ダメージ範囲のみ)を上にして出していきます。

全員出したら武器カードを表面にオープン。
皆のダメージ合計が獲物の数値を超えてない場合は、一番大きいダメージの武器カードを出したプレイヤーが狩り成功。
獲物の数値を超えていた場合は、一番小さいダメージの武器カードを出したプレイヤーが狩り成功。
という感じでした。

これはこれで各自が出した裏面から「合計ダメージを予想する」という狩り狩り原始人のベースが同じなのでオモロイと思ってます。

神アドバイス

テストプレイしてる時に「これ、コヨーテみたいに掲げて協力ゲームにしたらオモロイんじゃね?」と言ったのが遊ぼーど!とってぃさん!

うわ、本当だ。協力ゲームにしたら面白いかも!とワクワクしてしまい、そこから一気に協力ゲームに舵を切り、考え方を一旦リセットしました。

初の協力ゲームに挑戦

とってぃさんの神アドバイスにより対戦ゲームから協力ゲームに切り替え、「初の協力ゲーム制作にチャレンジするぞ!」となってからは自分が思う協力ゲームの良い所と悪い所をまとめました。

協力ゲームの良い所

目標達成する為に「皆と相談して進める連帯感」が良い!
目標達成した時の「皆で分かち合う達成感」が良い!

協力ゲームの悪い所

仕切るのが好きな人が居るとその人の指示に従うだけのゲームになる奉行問題

協力ゲームを作るにあたり、良い所を徹底的に伸ばし、悪い所を徹底的に封じる作戦にしました。

協力ゲームの良い所を伸ばす

皆と相談して進める連帯感

  • 自分の武器ダメージ数値は分からないけど、皆の武器ダメージ数値は分かる。
  • 全員の武器ダメージ数値の合計ダメージを皆で考える。

この上記2点のシステムにより、全員の意見が重要になる設計となっています。

なので「誰1人として発言する必要が無い」という事は一切ありません!仲間外れは出ない!

「私から見て超えてると思う!」と自らの意見が言いやすいですし、
「あなたから見てどう?」と他人の意見も引き出しやすいゲームになっています。

これにより「皆と相談して進める」という協力ゲームならではのワイワイ感が出るようになりました。

皆で分かち合う達成感

達成感を味わって頂く為に、どれだけ獲物の狩りに成功したら良いかを分かりやすくしました。

獲物ごとにまんぷくどの値を変更する事により、獲物の重要性の差別化ができるようになりました。
これはinuさんがテストプレイの時にくれたアドバイスです!
それまでは獲得枚数だけで達成したかを決めていました。

まんぷくどの設定により数値化されたので、ゲーム終了時に「どれぐらいお腹が膨れたか」が容易に想像できるようになりました!

「100%超えたらお腹いっぱいだね!やったー!」と目標達成が分かりやすい

まんぷくど5%のウサギは狩れなくても良いだろうし、数値が読めない弓を使おうなどの作戦会議もしやすくなります。(その5%が足りず100%行かなかったなんて事になる可能性もありますw)

ゲームバランス的にまんぷくど75%~90%で終わる事が多いのですが、そこで終わっても「健康な原始人」として「腹八分目で私たち健康だね!」とポジティブに終わるようにしました。

また、ギリギリ達成できなかったという部分で悔しさを煽り、再プレイに繋がるようにしています。

下記マーマンさんの動画ですごいまんぷくどを叩き出してるのは控えめに言って奇跡が起こってますw

協力ゲームの悪い所を徹底的に封じる

奉行問題について考えてみた

奉行問題は仕切りたい人が自分の考えに自信がある為、他人の意見は聞かず自分の指示通りに進めたくて発生しています。
また、「絶対に成功させたい」という強い想いも影響しています。

色々な方法を検討しましたが良い対処法が無く、「奉行問題を一切無くすのは無理」という結論を一旦出しました。

プレイヤーの性格に寄る所が大きいのでどうしても無理でしたね…。

その結論を出した上で、無理なら逆にそれを利用して新たなシステムを作れば良いのでは?と発想の転換を行い、生まれたのが「リーダーシステム」です。

リーダーシステム

リーダーカードを用意し、リーダーカードを持っているプレイヤー以外は一切の指示を出したり場を仕切る行為は禁止!としました。
リーダーは獲物ごとに時計回りで担当します。

仕切る人が出てきたら「あなた今リーダーじゃないから仕切っちゃダメよ」だったり、「リーダーの番までちょっと待ってね」とルール上言えるようにしました。

言いづらい事でもルールとして言えるというのはとても大きい事だと思ってます。

リーダーの責任感

リーダー以外仕切るの禁止以外に、掲げた武器カードを見て皆に意見を貰い、「そのまま行く」か「誰か1人武器を交換するか」の決定権をリーダーに与える事にしました。

決定権により、本当に狩りのリーダーみたいに「責任感」が生まれます。

なので、判断に迷ったら「リーダー!これどっちが良いですか?」と聞いちゃうのも有り。
リーダーも答えたら責任が発生するので「いやいや、自分で考えてよ!」と突っぱねても良し
リーダーの判断でうまく切り抜けたら「リーダーさすが!」となるし、ダメだったら「もーw リーダーw なにやってんだよ~w」みたいな感じで場が盛り上がります。

リーダーカードが生まれたことにより「責任によるプレッシャーが嫌」という方には合わない形となりましたが、ゲームなので気軽にリーダーのプレッシャーも楽しんで頂けたら嬉しいな!と思います。

武器の種類と数値調整

最初に作った武器

最初に作ったのは武器カードは棍棒(10~50)、斧(60~100)、槍(110~150)、弓(30、60、90、120、150)の4種のみ。

棍棒、斧、槍の3種はベースとして、弓の30の倍数は全く読めないランダム要素として入れました。
これだけで遊んでみると狩りの際に調整が難しい…。

調整用武器の追加

調整がしやすいようにと追加したのがナイフ(55~75)、ハンマー(105~125)、タイマツ(70~100)です。

ナイフとハンマーは5刻みで範囲も狭いので調整しやすい。
タイマツは使いやすいダメージ範囲で4枚しかないのでこちらも調整しやすいです。

ラッキー武器

最後にゲーム全体の難易度を下げたいと思い、場にあれば予想しやすくてラッキーなトゲトゲ(10 or 150)を追加しました。

場に2枚出てれば合計160として計算が容易に!
どちらかしか無い場合でも「超えそう!」や「足らなそう!」の意見からどちらか予想がしやすいです。

武器の数値調整はこのゲームの肝
徹底的に良い感じになるように全力でバランス調整をしました。

おたすけカード

困った時に使用できる「おたすけカード」があれば、リーダーの責任の重さも緩和できるかな?まんぷくど100%も達成しやすくなるかな?と5枚入れる事にしました。

ゲームで使用できるのは5枚中3枚だけ。(カードをシャッフルしてランダムに3枚決めます)
ランダムに3枚なので再プレイの際にはまた違ったおたすけカードになり、ゲーム展開が変わります。

「今使っておく?」だったり相談するのも面白いです。
ただ、最終的な判断はその時のリーダー!

使っておけば狩りが成功するかもしれないし、温存しておけば後で役に立つかもしれない…!

タイトル

タイトルはオノマトペを取り入れたくて、『狩り狩り原始人』にしました。
「狩り狩り(カリカリ)」って部分がオノマトペですね!
言いやすいし言いたくなるし覚えやすい!(狙いはコレです)

初期のモックの段階からずっと狩り狩り原始人と呼んでいました。

イラスト

獲物は可愛いイラストだと狩るのが可哀想になってしまうので、可愛くなり過ぎない事を意識してiPadで描きました。

レベルに応じて体の大きさも変えました。
大きいとお肉沢山でまんぷくども大きい!
けど大きい獲物ほど狩るダメージ範囲が狭く、合計ダメージも大きいので狩りが難しい…!

デザイン

ロゴデザイン

ロゴは原始人っぽく荒々しい感じにしたくてiPadで描きました。
空いたスペースに英語を入れました。

「狩り狩り」部分は荒々しい狩りを表す
「原始人」は野生や自然を表す
赤と緑の組み合わせは補色なので目立ちます。

パッケージデザイン

パッケージの表面はマンモスを狩る原始人たちをイメージして作成しました。
やっぱり一番強く角が立派なマンモスを載せたかった!

箱横は他の獲物たちにしました。
箱横と表のマンモスを合わせると全7体の獲物の確認ができます。

箱の裏面はインパクト重視で棍棒を大きめに入れました。

「目指せ!まんぷくど100%」がキャッチコピーです!

拘りとしては、蓋箱側に獲物を全種類、身箱側に武器を全種類載せました!
身箱側の箱横は蓋を取らないと見えないですけどねw

カードデザイン

武器カードの裏面は透けても見えづらいように、その武器の模様を細かく入れました。
その甲斐もあり、照明にかざしても全然分からないです!

カードも少し厚めにしてます!

武器カードの裏面は武器を選ぶ段階なので武器だけのイラストにし、表面は手にもって皆が見る面なので武器を手に持ったイラストにしました。

獲物カードはプレイ人数でダメージ範囲が変わるため、プレイ人数で色分けして見やすく、数字も極力大きくデザインしました。
また、一人当たりの平均を載せる事により、プレイしやすくしました。

背景は草原っぽくしてドラクエみたいなイメージで描きました。


獲物カードの裏面をサマリーにする事で「まだ出てない獲物はどれかな?」と皆で確認しやすくしました。
まだデカイの出てないぞ!じゃあこの武器は取っておこう!などの相談ができます。

最後に

「このゲームの完成度は高い」と自信を持つ事ができたので量産する事を決めました。

狩り狩り原始人はフォアシュピール2024春での試遊後投票『フォアシュピアクション』の上位20位に入り、Table Games in the World様の「ゲームマーケット2024春:注目の新作ボードゲーム」で5人以上がリストアップした17タイトルに入るなど、ありがたい評価を頂けました。

正直、ココまで良い評判を貰えると思っていなかったので意外でした。

皆様に遊んでもらい、「面白い!」と言って頂けてるのであればとても嬉しく思います。